2021年1月30日土曜日

千の眼

昔むかし西浜村のお話です。


ひとり暮らしの名もない若者が一人でひっそりと


暮らしていた。


若者は小さな畑と田んぼで生計を立てていた。


貧しかった、食うや食わず。


今日は夕ご飯のおかずに釣りに行こう。


竹竿を持ち近くの磯に行きぼんやりと釣ること1時間、


大きな50cmの鯛が釣れた。


意気揚々と家に帰り夕ご飯はご馳走。


普段食べたことのない刺身と焼き魚お腹も膨れたし、


大満足で寝床に入った。


その夜のこと、真夜中の丑三つ時。


台所で音がする。


夕方食べた鯛の取った鱗がゴミ箱から次々と動き出し


若者の寝ている部屋の障子・フスマ・天井に


張り付いたところ、


鱗が一斉に眼になりジッと若者を見つめる。


妖怪、千の眼。


若者は恐れず大急ぎで眼を集めるとたちまち


眼が宝石となった。


街の宝石屋に売りに行き大金持ちになり、


幸せに暮しました。


これが村に伝わる千の眼のお話です。

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